2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【4日目】

By , 2024年5月9日 10:10 AM

オートルート 4日目(4/5)ディス小屋〜ピンダローラ〜ヴィニエット小屋

山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】                     
【1日目】2024年4月2日 グランモンテ〜シャンペ 
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
 
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Haute_route Day 4 (2024_4_5)
 

 

 

 

今日はいよいよ行程中最高峰のピンダローラ(Pigne d’Arolla:3797m)を経由してヴィニエット小屋(Cabane des Vignettes CAS)へ行く。日本の富士山より高いところを通ることになる。

 
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ディス小屋の朝食
 

6:00はまだ暗くヘッドランプで出発。モン・ブラン・ド・シュイロンを横に見ながら硬い斜面をキックターンで登っていった。
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次第に明るくなってきた。朝日が射すモン・ブラン・ド・シュイロンをバックに登る姿がじつに絵になる。いたるところに氷河が顔を出していた。
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急な斜面を登り切ると平原になり休憩。視線を送ると手前の山のあいだからマッターホルン(Matterhorn:4478m)がのぞいていた。薄い雲でにじんだ朝の太陽がマッターホルンを真上から照らしている。マッターホルンの右にある秀麗な山はダン・デラン(Dent d’Herens:4173m)だ。マッターホルンとダン・デランはこれ以上ない構図と光の中でその勇姿を見せてくれた。夢中でシャッターを切った。
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アルプスの急峻な山をバックにたくさんのスキーヤーが登ってきた。しばらく進むと青い岩のようなものが転がっていた。氷河の破片だ。破片といっても人の背丈よりずっと大きい。落石ならぬ落氷である。それに寄りかかって休んでいる人もいた。
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そこを過ぎると氷河の上に回り込む。カリカリの氷河のトラバースはクトーも噛まず緊張した。Mさんは全行程中でここが一番緊張したとのこと。ガイドが一番際どいところで待っていて足の置き場を細かく指示してもらい最後は引っ張り上げてくれて助かったと話していた。登ってきたバルセロナの青年とも思わず「Good job!」タッチ。
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氷を渡る少しの距離だがいやらしかった。
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緊張のトラバース終了
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ここまでくればピンダローラはすぐそこだ。そのまろやかな山頂には多くの人の姿が見えた。ゆっくり山頂を目指した。
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ピン・ダローラ山頂が見えてきた。
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バルセロナの2人が下りてきた
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ピンダローラ山頂。行程の最高峰にして富士山より高いところにいる。つまり人生でもっとも高いところに立っている、と思うと感慨もひとしおだった。視界もよく風も強くない。山頂からは360度絶景が拝めた。正面にはマッターホルン、振り返るとヨーロッパ最高峰のモンブラン(Mont Blanc:4807m)がどっしり威厳のある姿で鎮座していた。しばらくアルプスの大眺望を堪能させてもらった。
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マッターホルン
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モンブラン
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みんな記念撮影
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ここからヴィニエット小屋まで一気に滑り降りる。山頂直下を軽快にターンしながら滑る。途中から新雪が腐って曲がらない苦痛の斜面になった。シュテムターンでこなしながらゆっくり降りていった。
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ピン・ダローラから滑降
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マッターホルンに向かって大滑降
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雪、腐ってます。
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 STOP! この先は氷河。
 

しばらく滑るとガイドがHutだと下の方を指差した。その先にヴィニエット小屋が見えた。崖の上に建っているその様子はまるで映画でも見ているようだった。よくこんなところに小屋を建てたものである。雪崩を避けるための絶妙な場所なのだろう。そこから長いトラバースで回り込みながら下り、最後は細い尾根筋を滑落しないように滑っていった。
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ヴィニエット小屋が見えた。
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ヴィニエット小屋もオートルートの要衝、多くの人でごった返していた。スキーやシールの置き場所を探すのも苦労する。
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チェックインしたら定番のランチだ。もちろん注文したのはロスティ。例によっておいしい。5人であっという間にたいらげた。
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夕食までたっぷり時間がある。昼寝したり写真を撮ったりと贅沢な時間を過ごした。食堂の奥にちょっとしたテラスがあって、そこからはモン・コロン(Mont Collon)の岩綾がすぐそこに見えた。
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ヴィニエット小屋より
 

小生、日本の山小屋でグッズを買ったことがないが、さすがにヨーロッパアルプスの山小屋となると衝動が抑えられず、ヴィニエット小屋のキャップを40フランで購入した。ちなみにこの小屋ではユーロ、フランどちらでも同レートだった。

夕食はスープと肉のパスタ添え。とてもおいしかった。そしてガイドと山の話で盛り上がったあと、明日の行動について確認し就寝となった。
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明日も5:00朝食、6:00出発だ。

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【5日目】

By , 2024年5月9日 10:10 AM

オートルート 5日目(4/6)ヴィニエット小屋〜レベックのコル〜アローラ氷河〜ベルトール小屋

山行記録は7回シリーズです。
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ヴィニエット小屋の朝食
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今日も6:00出発。ヘッドランプを頼りに小屋の前の細尾根を慎重に滑り降りる。そこからトラバースして平原に立ったところでシールをつけた。
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 ヴィニエット小屋方面を振り返って
 

昨夜ビニエット小屋に泊まっていたわれわれ以外のほぼ全てのパーティはレベックのコル(Col de l’Eveque)を越えたらその日中にツェルマットへ下りるとガイドが話していた。ベルトール小屋(Bertol Hut:3311m)を経由するのはノーマルルートではないらしく、これは誰のアイデアかと聞いてきたらしい。Eさんのアイデアだが、その理由は行ってみてよくわかった。詳細は後述する。

 
レベックのコルへ
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 レベックのコル
 

レベックのコルを越えると一瞬イタリアに入りツェルマットへのルートと分ける。われわれは大きく左に旋回し再びスイスに入った。このルートを取るのはやはりわれわれだけのようでトレースはひとつもない。右岸の支尾根には避難小屋(Refuge des Bouquetins CAS)が見えた。やがてアローラ氷河の広く大きな谷に入っていった。鳥海の千蛇谷を数倍大きくしたような広大な谷だった。
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この辺はイタリアかな?
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避難小屋
 

いくつかのパーティが登ってくる。ガイドがルートの状況をヒアリングしていた。続くパーティの一人が「日本人ですか?」と聞いてきた。そうだと答えると「わたしはドイツからきました」と流暢な日本語で喋っている。
「日本語上手ですね」
「にほんにすんでいたことがあります」
「日本のどこですか?」
「さいたまのところざわです」
あまりのローカルさに思わず吹き出してしまった。これから上まで登って日帰りでアローラに戻るとのことだ。
「お気をつけて」
「ありがとうございます。たのしんでください」
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日本語が上手なドイツ人
 

広いアローラ氷河の左岸をしばらくトラバース。あまりの広大さに夢の中を滑っているような感覚だった。
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アローラ氷河を振り返って
 

やがて複数のトレースが交わる地点に着いた。アローラからたくさんの人々が登ってくる。上からも滑り降りてくる。ガイドが呼び止め斜面の状況を聞いていた。この先斜面が硬いのでクトーを着けろとのこと。
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この先の下流がアローラ
ヴィニエット小屋は正面の山の中にある。
あの崖を滑り下りれれば10分ぐらいでここまで来られる、とは言っていたが・・・。
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 斜面の状況を聞くガイド
 

いよいよ今回最後の山小屋ベルトールへの登り、標高差は600m。ベルトール小屋の標高は3311mで、今回の行程中もっとも高い場所にある小屋だ。徐々に斜度がきつくなってきた。200mほど登ったところから急斜面を巻いていくが、ここがいやらしかった。斜面はカリカリでクトーを効かせるのもひと苦労。おまけに上からスキーヤーが次々に滑り降りてくる。そのうちの一人が私が難儀しているちょうど上でバランスを崩して倒れ込んだ。もし彼がそこで滑落していたら私は巻き添いを喰らって谷の底だったかもしれない。今考えてもゾッとする。少し先でわれわれをフォローしていたガイドが私の後ろの方を見ながら「おーーーー」と叫んでいた。私は後ろを振り向く余裕もなくひたすらエッジを噛ませて踏ん張っていた時だ。あとで聞いたがそのスキーヤーはこの先で暴走しバランスを崩して滑落したそうだ。かなり下った先だったので雪が付いているところで止まって大事には至らなかったようだが。ちなみにこのあたり、ツェルマットからヴェルビエに抜ける山岳レースPDGPatrouille des Glaciers)のコースになっている。支柱が立てられていたがレース本番ではここに滑落防止の網が張られるらしい。それほど滑落の危険がある場所ということだ。このレースのトレーニングで多くの山岳スキーヤーが訪れていたのかもしれない。余談だがこのPDG、第二次世界大戦真っ只中の1943年に始まったスイス軍の兵士能力テストが起源の山岳スキーレースである。隔年開催で今年は開催年だ。日程は2024年4月17日〜21日。この原稿を書いている今、まさにアルプスの山中で熱戦が繰り広げられていることになる。(後日知ったが、今大会はアルプス全体が悪天候で4本中3本のレースが中止になったそうだ)
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難所を過ぎると後はひたすら登るだけだ。軽装の男女がものすごいスピードで駆け上がっていった。やがて斜面の上の方にベルトール小屋が小さく見えてきた。あと標高差300mぐらいだ。振り向くときのう登ったピンダローラが真っ白でまろやかな姿を見せていた。
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ピン・ダローラをバックに
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一歩一歩小屋が近づいてきた。ヴィニエット小屋同様、これまたすごいところに建てたものだと感心する。最後の急坂を登ってようやく小屋に着いた。小屋の周りに平な落ち着けるところはなくわずかなスペースに腰を下ろして後続を待った。
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右上にベルトール小屋が見える
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小屋の周りに落ち着けるところはない
 

全員が到着した。スキーは小屋へは持ち込めないためデポするが、明日の滑走に備えて尾根の反対側にデポした。小屋へはハシゴで登っていく。ハシゴで登るとは聞いていたが正直ここまで長いハシゴだとは思っていなかった。スキーブーツでの登りは滑りそうで怖い。セルフビレイしながら一段一段登っていった。ハシゴを登り切ると階段になるがこれも足場用の階段で心許ない。ようやく玄関まで来たが、足場は鉄の網で足下には谷底が丸見え。震えながら小屋に飛び込んだ。岩綾の上にはみ出すように建てられた小屋はまるで肝試しでもしているかのよう。まんまとドッキリ企画にはめられたような心境だった。
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「Bienvenue」 フランス語でWelcome
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ハシゴ上部より リッジの上に小屋が建っている
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ベルトール小屋は名物小屋。たしかにこんな小屋にはめったにお目にかかれないだろう。なるほどEさんがベルトール小屋にこだわった理由がわかった。オートルートに来るならやはりベルトール小屋は外せないと予約してくれたのだ。そしてこの小屋、予約は電話のみ、かつ、すぐに埋まってしまうらしい。今回の計画はベルトール小屋の予約日を軸に組んでいったともいえる。ありがとうEさんMさん
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トイレは外
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融水を引水
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まずはお決まりのロスティをと思ったがメニューになく、 Crouteという料理で空腹を満たした。隣のテーブルではカードゲームに興じていた。ヨーロッパではトランプが盛んのようだ。宿帳が回ってきて記名した。ページをめくる限りここ数年は日本人の名前は見当たらなかった。
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小屋は円形になっていて食堂からの眺めも抜群。マッターホルンが穂先を少しだけ覗かせていた。明日通るルートにはいくつかのトレースがついていた。
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マッターホルンが覗く
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仲間が昼寝をしている間、私は撮影にいそしんだ。太陽がいい感じに傾き一帯が琥珀色に染まってきた。外の階段を陣取りピンダローラ方面にレンズを向けた。刻々と変化する光と影をカメラに収め続けた。実にいい時間だった。
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ベルトール小屋からピン・ダローラ
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反対側にはマッターホルン
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穂先を覗かせるマッターホルン
 

夕食。まずスープ、そしてメインはライスの上に肉がのせられたもの。このライスが思いっきりアルデンテで、私はこんなものかと美味しく食べていたが、ガイドが「これはMistakeだ」といって顔をしかめていた。厨房がかなり混乱していたのでご飯がうまく炊けなかったのかもしれない。明日の朝食のオーダーを書きながらデザートを食べた。
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小屋の主人から明日の天気について説明があったが言葉が分からずさっぱりだった。どうやらあまりいい条件ではなさそう。「大丈夫そうですか?」と聞くと「彼はペシミスト。大丈夫だ」とガイド。

部屋の窓からは残照のピンダローラが名残を惜しんでいた。
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夜はなかなか寝付けなかった。高度のせいかもしれない。何度も目を覚まし何回かトイレに行った。トイレは外にあって、つまり下がスケルトンの鉄の網の上を通らなければならない。真っ暗で何も見えないことが幸いして怖くなかったが。夜中外に出たときかなり強い風が吹いていた。明日予定通りに行けるか不安になる。

 

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【6日目】

By , 2024年5月9日 10:10 AM

オートルート 6日目(4/7)ベルトール小屋〜テーテ・ブランシュ〜ツェルマット

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いよいよ最終日。今日も6:00出発だ。われわれの歩きが遅いこともあり、暑くなる前に行動するためなるべく早く出発したかったとのことだった。

ガイドはわれわれに、全行程を通じて一度も「遅い」とか「もっと早く歩け」などと言わなかった(結構な割合でこのようなことを言うガイドがいるらしい)。自分のやり方を客に強いるのではなく「この客がどうやったらオートルートを完踏できるか」を常に考えながらさりげなく提案してくれる、そういう稀なガイドだったと思う。あらためてこのガイドに巡り会えたことに感謝したい。

風もなく穏やかで予定通りツェルマットに降りることになった。これで計画していた全行程を辿ることができる。嬉しさがこみあげる中、ヘッドランプをつけて名物小屋・ベルトール小屋を後にした。

まずはハシゴを降りなければならない。2枚のカラビナをつけたスリングで確実にセルフビレイをとりながら慎重に降りていった。リッジ状の尾根の反対側に出て昨日デポしておいたスキーをはいた。ここから大きくトラバースする。
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ベールトール小屋を振り返って
 

氷河の向こうの朝焼けが美しい。これから今日の最高地点テーテ・ブランシュ(Tete Blanche)に登っていく。このあたりからPDGPatrouille des Glaciers)用に立てられたポールが出てきた。傾いたポールをガイドが直しながら登っていった。先行のパーティはアンザイレンで登っていた。
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周囲の山々には氷河の塊が隆起し蒼い溶岩のように露出していた。人と比較すると改めてその巨大さがわかる。
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最後の斜面を登っていくとマッターホルンが姿を見せはじめた。テーテ・ブランシュの肩に到着すると正面にドーンとマッターホルンが姿を現した。4000mを超える名峰と遜色のない高さから眺める姿は平地からのそれとは一線を画していた。サハラの砂で空気が霞んでいたが淡いトーンのマッターホルンもなかなかいい。真上の太陽がマッターホルンを神秘的に照らしていた。マッターホルンの麓にはこれから滑っていくツェルマットまで延々と続く谷が一望できた。テーテ・ブランシュに登る人たち、アンザイレンで滑る人たちが目の前を過ぎていった。
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テーテ・ブランシュの肩。PDG関連の荷だろうか?
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光降るマッターホルン
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Eさんはテーテ・ブランシュまで行ってくるといって登っていった。Eさんが帰るまでこの大展望を堪能した。

Eさんが合流してマッターホルンをバックに全員で記念撮影。フィナーレにふさわしい一枚になった。

さあ、あとはツェルマットまで長い滑りだ。ザラメ状になった雪にいい感じでターンが刻めた。PDG用のポールを頼りに下っていった。次第に斜面が固くなっていく。ときおりセラックが顔を出した。雪が茶色い部分はサハラ砂漠の砂だ。ここからはとにかくマッターホルンを真正面に滑り降りて行った。
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マッターホルンに向かって滑降
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セラックとサハラの砂とマッターホルン
 

岩綾の中腹まで氷河がせりだしているところに来た。氷河が溶けて流れ出した部分が滝状に凍っているのが見える。PDGコースの中でも危険箇所といわれるところだ。雪崩の跡がはっきり見える谷を通過しなければならない。50m間隔で一人ずつ滑った。固まったデブリを通過するが、これがとてもターンなどできないほど難儀した。終始プルークで慎重に通過。脚がガクガクになった。
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 デブリ通過
 

その先は氷河が侵食した広い谷をマッターホルンを真横に見ながら滑っていった。左岸のモレーンの上に小屋(Schönbielhütte SAC)が見える。ツェルマットから登ってくる人もいた。モレーンに囲まれてくると斜度もなくなり平坦になっていった。木々も出てきた。いよいよラストランだ。
 
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モレーンの谷
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雪が切れてスキーを担いで15分ほど歩くとスキー場に出た。あとはツェルマットまでゲレンデと林道を滑るだけだ。
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氷河が溶けたエメラルドグリーンの川を渡って長く楽しいオートルートは終了した。最後は全員でハイタッチ。
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夢にまで見たオートルート。この山スキーヤー垂涎の山旅はわれわれに期待以上の感動を与えてくれた。そしてこの旅は私の思い出にもっとも深く刻まれることだろう。

山行前にさまざまなトラブルがあったり、天候によって期間が短くなったりしたが、大きな問題もなく全員無事完踏できた。この山行はシャモニーのガイドそしてなんといってもEさんMさんなしでは実現しなかっただろう。3人にはあらためて感謝の意を伝えたい。Merciそしてありがとう。


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2023年8月 水晶岳 テント泊縦走

By , 2023年10月19日 4:38 PM

・日程:2023年8月28日〜31日
・天候:晴れ
・ルート:
(1日目)折立〜太郎平〜薬師岳〜太郎平キャンプ場(泊)
(2日目)太郎平キャンプ場〜薬師沢小屋〜雲ノ平〜雲ノ平キャンプ場(泊)
(3日目)雲ノ平キャンプ場〜水晶岳〜黒部源流〜雲ノ平キャンプ場(泊)
(4日目)雲ノ平キャンプ場〜薬師沢小屋〜太郎平〜折立
・メンバー:KK(単独)



 

天候が落ち着いた頃を見計らって北アルプスの最深部、水晶岳へテント泊縦走に行ってきました。

予想通り天候も安定し、水晶岳頂上からは360度の大パノラマが拝めました。

途中スキーの下見も兼ねて薬師岳にも寄ってきました。「薬師岳圏谷群」として国の天然記念物になっているカール地形は山スキーヤー垂涎の斜面。近いうちに大カールの滑降を計画したいもの。

また、雲ノ平を囲む山々は黒部川の源流地帯。今回の山旅を通じて、最初の一滴から富山湾に注ぐまでの黒部川の姿をリアルで見られたことは印象に残りました。

 

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薬師岳第1カール 先に見えるのはこれから目指す水晶岳
 
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太郎平キャンプ場 夏のオリオン
 
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黒部川と薬師沢小屋
 
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水晶岳現る 雲ノ平山荘手前
 

【祖父岳山頂からの絶景】
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黎明の槍穂
 
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鷲羽岳と槍穂
 
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朝焼けの笠ヶ岳
 
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水晶岳とご来光
 
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朝焼けの水晶岳
 
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朝日を浴びる槍穂
 
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黒部五郎岳
 
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槍穂の印象
 

【水晶岳山頂から】
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水晶岳北峰と薬師岳
 
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槍穂方面 遠くに富士山
 
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読売新道、劔、立山、黒部湖方面
 

どこを見ても絶景
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鷲羽、ワリモ、笠
 
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雲ノ平キャンプ場

2023年8月 大キレット 槍ヶ岳〜北穂高岳縦走

By , 2023年8月18日 3:20 PM

・日程:2023年7月31日〜8月3日
・天候:晴れ
・ルート:上高地〜槍沢ロッジ〜槍ヶ岳〜槍ヶ岳山荘〜大キレット〜北穂高小屋〜上高地
・メンバー:CK、KK(撮影&記録)

下界の猛暑から逃れるように、天空の稜線歩きをしてきました。
メインイベントは大キレット。一般ルート最難関といわれる痩せた岩綾尾根は歩きごたえ十分。

途中途中の大絶景をゆっくり写真と動画に収めながら、3泊4日の贅沢な山旅を満喫しました。

↓ 大キレット踏破の様子は詳細に動画に収めてきました。


 

絶景の写真を何枚か載せておきます。

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 逆さ槍 天狗池
途中、南岳への分岐に荷物をデポして天狗池へ
 
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槍の穂先と虹 槍ヶ岳山荘より
 
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 槍ヶ岳とご来光
 
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大キレットと槍ヶ岳 北穂高山荘より
 
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大キレットと槍ヶ岳 北穂高山荘より
 
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モルゲンロートの大キレット 北穂高山荘より
 
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大キレットを落ちる滝雲 北穂高山荘より
 
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ライチョウ 北穂高岳山麓
 

2023/7/17 八海山

By , 2023年7月23日 7:47 AM

・天候:晴れ、稜線付近曇り
・ルート:ロープウェイ〜千本檜小屋〜八ツ峰岩峰帯〜迂回コース〜千本檜小屋〜ロープウェイ
・メンバー:CK、KK(撮影&記録)



本格的なシーズンを前に岩場と高所に体を慣らすため、八海山の岩峰帯をたどってきました。
メインの八ツ峰は鎖場の連続する評判通りの厳しいコースで、鎖に命を預ける箇所も何箇所かありました。
帰路は迂回コースを辿りましたが、鎖場あり、下ノ廊下的なところもあって、こちらも気が抜けませんでした。
スリル満点の山行を堪能しました。

2023/3/9 乳頭山

By , 2023年4月5日 2:24 PM

・天候:曇りのち晴れ
・ルート:乳頭温泉〜孫六温泉〜田代平山荘〜乳頭山〜ピストン
・メンバー:CK、KK(撮影&記録)



秘湯の一軒宿が並ぶ乳頭温泉をベースに乳頭山へ。
一級品のブナの森を堪能しながらスキーでのんびりと山頂を目指しました。
乳頭山から望む秋田駒ケ岳の勇姿は一見の価値あり。

2023/3/8 秋田駒ケ岳

By , 2023年4月1日 5:25 AM

・天候:晴れ〜曇り
・ルート:アルパこまくさ〜アッスルスキー場跡〜八合目小屋〜男女岳(秋田駒ヶ岳)〜ピストン
・メンバー:CK、KK(撮影、記録)



早春の東北滑走。
今回は名峰・秋田駒ケ岳。

快晴の朝、ご来光とともに出発。
3月上旬で天候が落ち着いていたものの山頂付近は猛烈な風で立っているのもやっと。
山頂ではエビのシッポが見事な造形で迎えてくれ、360度の展望が疲れを癒してくれました。
山頂直下の大斜面を存分に楽しみながら、ひと足先に春スキーを楽しんできました。

2023/1/27 鍋倉山

By , 2023年2月8日 11:05 AM

・天候:曇り
・ルート:温井〜沢コース〜鍋倉山〜東尾根〜北東尾根〜温井
・メンバー:KKIさん(会員外)

今冬の北信州は雪が少なく、鍋倉山もなかなか藪が埋まりませんでした。

そんな中、1月後半にやってきた大寒波でようやくまとまった雪が降りました。
パウダー天国の鍋倉山もコンディションは万全。

美しいブナの森を堪能しながらのハイクアップとパウダーラン。
途中からI さんと合流し鍋倉山のパウダーを堪能しました。

2023/1/7 羊蹄山

By , 2023年1月27日 8:38 PM

・天候:晴れのち曇り
・ルート:喜茂別コース〜1100m付近〜ピストン
・メンバー:KK、CK、EAさん(ウルスカOB)、MMさん(ウルスカOG)



2023年のシーズンインは北の大地からお届けします。今回のフィールドは、別名蝦夷富士と呼ばれる北海道の羊蹄山です。そのひときわ秀麗な姿は富士山に勝るとも劣らず、斜面は山スキーヤー垂涎。今回は喜茂別コースをチョイスしました。帰りの飛行機の関係でハイクアップは1100m付近で終了。期待通りの極上のパウダースノーをダケカンバをくぐりながら軽快に滑りました。

滞在先の五色温泉で会ったEAさん(ウルスカOB)、MMさん(ウルスカOG)とご一緒しました。

下山後は羊蹄山をぐるりと周りながらさまざまな角度からその美しい姿をカメラに収めました。