2025年7月 赤木沢 北アルプスの美渓を沢登り

By , 2025年8月10日 10:43 AM

北アルプス黒部川水系赤木沢
沢登り
2025年7月下旬
KK単独



2025年夏。下界は連日の酷暑。こうも暑いとやはり沢を歩きたくなる。7月下旬、好天が続く予報を狙って北アルプスの名渓赤木沢に向かった。

今回の計画。1日目は折立から太郎平キャンプ場に登ってベースを張る。2日目の早朝に薬師沢小屋へ向かいそこから入渓、黒部川本流を遡行して赤木沢を詰める。縦走路で戻るが、そのまま下界に下りても暑いだけなのでテントでもう1泊。という2泊3日の山旅だ。

赤木沢は20数年振り。そのときはロープやらガチャ類やらを持っていったがお守り(オモリ?)になった記憶がある。地形の様子はひと通り把握しているし単独ということもあって、今回はロープをはじめ特別な装備は持っていかなかった。(※黒部本流の水量、メンバーの技量等を考慮し、装備は十分に検討されたし)

2日目の未明、3時前にはテントを出発し、ヘッデンを頼りに薬師沢小屋を目指した。念のため熊鈴を鳴らしながらの行軍だ。真っ暗闇のなか1時間ほど歩くとうっすら白んできた彼方に水晶岳のシルエットが浮かんでいた。

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すっかり明るくなったころ薬師沢小屋に到着。テント場からは約2時間だ。アルファ米をかきこみ沢支度をして小屋脇のハシゴで黒部本流に降りた。
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ひんやりとした朝の空気のなか遡行開始。奥の廊下と呼ばれる上流域とはいえそこは大渓流の黒部川、見事な流れはいつもと変わらない。朝イチであまり濡れたくなかったので、深場のへつりを避けながら右へ左へと渡渉を繰り返す。
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先行者
小ゴルジュ帯は右岸づたいに行けそうだが、残置シュリンゲがある岩を越えるのが難儀そう。ドボンしたくないので左岸から巻いた。前方にナイアガラの滝が見えてきた。いよいよ赤木沢出合が近い。
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右岸の岩に残置シュリンゲがある
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奥に見えるのが赤木沢出合のナイアガラの滝
薬師沢小屋から1時間ほどで有名な赤木沢出合に到着。エメラルドグリーンの瀞に幅広な滝が美しく落ちている。来る者みなに感動を与える、えもいわれぬ美しいところだ。この絶景を撮るためだけに担いできた三脚を立ててしばらく撮影。
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赤木沢出合 自然の芸術
途中で追い越したお二人が追いつきプールに腰まで浸かりながら赤木沢へ進んで行った。カメラをビニール袋に密封してザックに詰めて出発。赤木沢へは左岸をヘツリながら入っていく。出合では先ほどのお二人がロープを出して遡行の準備をしていた。先に行かせてもらう。
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赤木沢に入るや後ろから光が射してきた。背後の山影から朝日が昇ってきた。図ったかのようなタイミングだ。ただでさえ美しい赤木沢が光芒によってさらに美しく演出された。思わずザックからカメラを出してシャッターを切った。
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美しいナメをすぎるとさっそく20mの滝がお出迎え。ここを皮切りに美しい滝たちが次々と現れる。そのほとんどが直登できる、これが赤木沢の魅力だ。
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軽快に登っていくとさらさらと流れるナメ状の滝になり、ここも気持ちよく進む。ふりかえると赤木沢の流れが美しく輝いていた。
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左からのウマ沢を過ぎると平瀬が続き、まもなく10〜20m前後の滝が連続するが、どれも順調に越えていく。
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連続して美滝が現れる
 

すると2段15mの滝が行手を拒む。落口を見ると滝に取りつくには深いところを少しの距離だが浸かる必要がありそう。カメラをしまうのが面倒なので右岸を巻くことにする。ルンゼを20mほど登って笹藪をトラバースすると踏み跡が出てきて滝上部へ。
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ここは左から巻いた
 

続いてゴルジュ地形の10mが出てきて一見難しそうだったが、行ってみると右岸伝いに簡単に越えられた。
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平瀬を進み左からの細い流れを過ぎると沢が開け、正面に赤木岳が見えてきた。目指す稜線だ。
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目指す稜線が見えてきた
 

しばらく平瀬とナメを進み、左からの小沢を過ぎて5mほどの滝を越えると数段になって落ちるナメ滝が見事な姿を見せていた。この滝も問題なく登っていける。ふりかえるとかなり高度を上げてきたことがわかる。

少し進むと美しいナメの数段滝が迎えてくれた。
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さらに進むとゆく手に巨大な岩の壁が見えてきた。近づくと右手の陰から流れ落ちる立派な滝が姿を見せた。大滝だ。
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奥に見えるのが大滝
 

大滝手前の小滝上部左岸の赤テープが高巻きの取り付きになっていたが、今回は少し手前のルンゼから巻くことに。急斜面のルンゼを30〜40mよじ登っていく(途中にハーケンとシュリンゲが残置してあった)。やがて草付きの踏み跡になってさらに登っていくと突如踏み跡が消えてあせったが、左手側の笹藪をかき分けるとかすかに踏み跡が確認できた。それを進むと赤テープの巻道と合流し、滝の落口上部へ出ることができた。下からは見えなかったが奥にもう1段の滝が落ちていた。赤木沢のハイライト、大滝突破だ。(高巻きの詳細は動画参照)
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残置シュリンゲ
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大滝は2段になっている
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 大滝の落口
 

大滝を越えると渓相は一気に源流だ。右からの支沢を過ぎて地形図の2237m地点二股は左へ入った。どの支流をたどってもいずれ稜線に至るはず。この辺のルート選択は個人の好みだ。この先もしばらくきれいなナメ床が楽しませてくれた。やがて奥の二股に至って左に進み水流が一気に減ったと思ったら、岩の間から最初の一筋が滲み出ているところまできた。
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標高2237mの二俣
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きれいなナメが続く
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奥の二俣
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赤木沢最初の一滴
 

枯れた沢筋を左にたどっていくと草原に躍り出てそこで沢装備を解いた。北アルプスの山々にぐるりと囲まれた大草原にただ一人たたずみ、登ってきた赤木沢を顧みながら達成感を味わった。
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草原に躍り出る
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 沢装備を解く
 

縦走路に出るまでハイマツ帯に阻まれつつ右へ右へ進んだが、奥の二股のさらに奥の二股を右に進めば素直に中俣乗越に至るのかもしれない(ルート選択は自己責任で)。そうして中俣乗越の道標がある登山道に到着した。薬師沢小屋からここまで4時間30分、テン場からは7時間弱ということになる。沢の中は涼しい上に水に浸かっているためバテることはなかった。
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 登山道に着いた
 

目的達成。となればハッピーなはずだが、ここからテン場までがなかなかしんどい。標高2000mを越えるとはいえ真夏の太陽は縦走路を容赦なく焼きつける。おまけにアップダウンが加わりじわじわと体力は消耗する。いや、ここは「ダイヤモンドコース」と呼ばれる北アルプスの名峰を見渡せる爽快なルートだ。贅沢なコースで下山させてもらえる、とポジティブモードに切り替えることにする。
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アップダウンが・・・
 

赤木岳からは、登ってきた赤木沢が水晶岳をバックに足元まで延びているのがはっきりとわかる。北ノ俣岳の懐には薬師沢左俣の源頭がまるで登山道のように続いているのが見える。いつかたどってみたいものだ。
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赤木沢と水晶岳
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薬師岳と薬師沢左俣
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北ノ俣岳山頂は北アルプスの大展望台になっていた。槍、水晶、鷲羽、三俣蓮華とそのあいだからのぞく大天井などの山々、その懐深く入り込んだ黒部本流の谷もはっきり確認できた。
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鷲羽、大天井、三俣蓮華、黒部の源流
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水晶、鷲羽
 

北ノ俣岳の先では見事なお花畑が癒してくれた。最近まで残雪があったのかチングルマとハクサンイチゲが大群生。ここまで道中のチングルマは綿毛の実になったものばかりだったが、これには思わず歓喜。水晶、鷲羽、薬師・・・名だたる名峰をバックに咲き誇る光景は圧巻だった。さすがはダイヤモンドコース、絶景を堪能させてもらった。
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チングルマ
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ハクサンイチゲ
 

だらだらと太郎山を登っているとすぐ傍に雷鳥がいた。太郎山を過ぎると太郎平小屋が見えてきた。小屋で買ったキンキンのノンアルビールが全身に染み渡った。今朝出発して10時間弱、登山道と沢をめぐってぐるりと一周してきた。
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その晩は快適なテントで、行程を回想しながら贅沢な時間を過ごした。
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太郎平キャンプ場
 

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