Category: 山スキー

2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【プロローグ編】

By , 2024年5月9日 10:11 AM

「オートルート シャモニー〜ツェルマット」山行記録

・日時:2024年4月2日〜7日
・山行メンバー
 Bさん(シャモニーのガイド)
 Eさん(ドイツ在住)
 Mさん(ドイツ在住)
 Cさん(渋谷山の会ウルスカディ)
 K(渋谷山の会ウルスカディ) 記録
 
山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】    
【1日目】4月2日 グランモンテ〜シャンペ   
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
※このページは山行までの顛末をつらつらと記録した【プロローグ編】です。とにかく山行記録を読みたい、という方はこのページは読み飛ばしてください。
 >>> 【1日目】はこちら
 

2024年4月、念願のオートルートに挑戦した。
メンバーはドイツ在住のEさんMさん、日本からCさんK(ともに渋谷山の会ウルスカディ会員)、シャモニーのガイドBさんの5名。

オートルートといえば世界でもっとも人気の山スキーツアーコースで山小屋の予約が難しい。そのため計画は1年がかりとなった。Eさんは今回が3回目で勝手がわかっている。年始には初滑りも兼ねて北海道の白銀荘に4人で集合し、その際オートルートのコース概要や山小屋の様子、雪の状態、食事、装備、服装など素朴な疑問を訊ねることができた。おかげでネットだけでは得られない実体験に基づく貴重な情報が聞け、具体的なイメージを掴むことができた。

EさんMさんには山小屋の予約を含め計画全般にわたって全面的にお世話になった。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

羽田に向かう途中Mさんからチャットが。「頼んでいたガイドが直前でケガをして代わりのガイドをアサインしてきた」とのこと。実はガイドが変わるのはこれで2回目。つまり3人目だ。3人目のガイドはガイド歴半年でオートルート経験は2回しかないらしい。かなり心許ない。Eさんから他のガイドを探してみる旨の連絡が来て以降連絡が途絶えた。なんだか不穏な空気が漂ってきた。われわれ日本組は飛行機を予約しているため、状況はどうであれヨーロッパには飛ぶしかなかった。最悪のケース(ガイドが見つからずゲレンデ中心のスキー)も覚悟しながら、でもヨーロッパでのスキーは初めてでそれはそれでよしとした。

飛行機はウクライナ戦争の影響でロシアを大きく迂回する太平洋〜カナダ〜グリーンランド〜ヘルシンキのルートをとった。ヘルシンキ空港で入国審査後ジュネーブへの乗り継ぎの時間をつぶしをしているとMさんからチャットがきた。「吉報です!ガイドが見つかりましたー!」。短い文面からも喜びが伝わってきた。連絡が途絶えてからこれまでふたりが現地ですったもんだしている姿が容易に想像できた。とにかくおつかれさまと伝えたかった。

EさんMさんはひと足先に車でシャモニーに到着しスキー場で滑っているはずだったが、「タイヤがパンクして、いま修理で隣町まで来ている」らしい。またしてもトラブル・・・。

ヘルシンキからジュネーブへ飛び、そこからは予約しておいたワゴンタクシーでシャモニーへ向かった。

こうして4人がホテルで再会したのは夕方だった。それからはガイド決定までの経緯について話が尽きなかった。要はこうだ。一人目は以前にもガイドしてもらった実績があるオーストリア人だったが、奥様のケガでどうしても都合がつかなくなり代わりのガイドを紹介された。この二人目のガイドもオーストリア人で、この人とは事前に日本とドイツ、オーストリアを結んでオンラインミーティングをやっている。しかしこのガイドも先に触れた通り直前のケガでキャンセル。代わりに紹介されたのが若い新米ガイドだった。こっちも命に関わる山行なので「はいわかりました」とはいかない。不安なのでEさんが電話で経験や力量、悪天候時のエスケープルートや代替案など多方面からヒアリングしたそうだ。そうこうしているうちに先方から断ってきたそうだ。土壇場でガイドの当てがなくなった。ダメ元でシャモニーの3つのガイド斡旋事務所にガイド依頼の問い合わせを入れたところ、日本人経営の事務所からガイドが見つかったと連絡が入りホッと胸をなでおろした、という次第。結果オーライでこのシャモニーのベテランガイドが大当たりだった。その凄さはおいおい触れていきたい。

今回のオートルートの計画は、6つの山小屋に泊まりながら4/14/7の7日間の予定だったがどうやら天候が怪しい。例年だとこの時期ピーカン続きで天気は心配無用のはずだった。4/1は低気圧が通過するため入山は難しい。4/2は回復して山行日和。しかし4/3はまた崩れるといった感じでパッとしない。通しでオートルートを踏破するのは難しいかも、と4人で話していた。

ちなみに、山小屋は2日前からはキャンセル料が全額かかる。この時点でMさんEさんの判断により4/1のアルバート・プレミア(Albert Premier)小屋と4/2のトリエン(Trient)小屋はキャンセルしていた。この辺の判断が微妙に難しかったりもする。山小屋の予約状況をネットで見るとこの2日間はガラ空きで天候の悪さが容易に想像できた。

4/1
、山は風が強く入山は無理。スキー場のゴンドラもほとんどが運休。なんとかリフトが動いているバルメ(Balme)スキー場で足慣らしとなった。滑走中Eさんのビンディングが破損。またもやトラブル・・・。一難去ってまた一難だ。Eさんはテレマークでビンディングのパーツは一般的ではない。修理不能で最悪スキーのレンタルも視野に街のショップ巡りへとスキー場を降りて行った。幸いにもアルジェンチェールのショップにパーツがあって修理できたとのこと。やれやれトラブル続きだが、山行前にウミを出し切りすべては良い方向へ向かっていると前向きに捉えることにした。

4/1の夕方、ガイドと山行の打ち合わせ。われわれの宿にガイドと事務所のご主人が来てくれた。ガイドは地元シャモニーの50代のベテランだった。ゆっくり英語で話しかけてくれる。天候についてガイドの見立ては、明日4/2は晴れて風も収まるが翌4/3は芳しくない。4/4以降はなんとか持ちそうとのこと。予定より1日過ぎているため当初ルートの途中から入山することも覚悟していたが、ガイドの提案は、まず明日4/2にグランモンテスキー場〜アルジェンチェール氷河〜パッソンのコル〜トゥールのコル〜エカンディのコル〜シャンペを一気にやる、無理そうだったら途中で下山するというもの。下山ルートは複数あるらしい。通常2〜3日かかるルートを1日でやってしまおうというわけだ。それがどの程度の難易度なのか想像もつかなかったが、無理なら途中下山可能とのことなので提案を受け入れることにした。そして明後日の4/3は天候が荒れて特に朝の行動はリスクがあるため、4/2は一旦この宿に戻り4/3に車でヴェルビエまで移動し、ゴンドラを乗り継いでスキー場から山に入り、一気にショーのコルを越えてプラフルーリ小屋に入る。そこまで行ってしまえば以後の天候は大丈夫だろうとのことだった。ガイドからは4/3の天候が最悪ならばディクサンス(Dixence)からリフトで上がり2時間程度歩いてプラフルーリ小屋まで行くという方法も提案された。結局われわれはこの方法を取らなかったが、プラフルーリ小屋で出会ったパーティはこのルートを使ったが、要所となるトンネルを見つけるのに2時間もかかり苦戦したと話していた。彼らはかなり遅い時間に小屋に到着していた。

1日少ない日程になっていたがガイドの提案に従えば当初の予定通りルートを踏破できる。この時点では半信半疑だったが、結果的にはガイドの抜群の地理力、天候予知力、リーダーシップ、ガイディングスキルによって特に大きな問題もなく実現することができた。ガイドの提案がピタリとはまったわけだ。現地のベテランガイドの凄さを思い知らされた山行となった。他のガイドだったら踏破が実現できたか、正直無理だった可能性が高い。
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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【1日目】

By , 2024年5月9日 10:11 AM

オートルート 1日目(4/2)グランモンテスキー場〜パッソンのコル〜トゥールのコル〜エキャンディのコル〜シャンペ

山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】                     
【1日目】2024年4月2日 グランモンテ〜シャンペ
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
 
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いよいよ緊張の1日目。3つのコルを越えるこの長丁場、果たしてシャンペまで行けるのだろうか。グランモンテのゴンドラ乗り場で9:00にガイドと待ち合わせた。
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グランモンテ ゲレンデトップ
 

天候は良くない。
「天気大丈夫ですかね?」
「リラックス、リラックス」
問題ないと笑顔で返してくる。実際ゴンドラ降り場からアルジェンチェール氷河(Glacier du Argentiere)に向けて歩き始めた頃、図ったように青空になってきた。ガイドは長い経験から時間と場所の天候がほとんどピンポイントで予測できるらしい。
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たくさんの人たちが登って行く。フランスのミリタリーがピタリと等間隔を保って登っている。雲が切れて青空がのぞくとヨーロッパアルプスの勇壮な山々が眼前に広がってきた。どれもこれも素晴らしい光景だ。
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しばらくシールで登るとちょっとした尾根越えがあり、そこはクトーを効かせて乗り越えた。すると視界が開け正面の遠方にパッソンのコル(Col du Passon)が小さく見えてきた。

滑走モードに切り替えてコルを目指した。うれしいことにここ最近の荒天で斜面はパウダー天国。思いがけずヨーロッパの粉雪を堪能した。嬉しい誤算だった。しばらくはアルジェンチェール氷河目指してパウダーラン。
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うれしい誤算!
 

急斜面に差しかかったところでガイドが自分が下に降りてから合図するといって、とても斜面とはいえない狭くて急なノドのような地形を横滑りで降りていった。Goサインが出て私から滑降開始。このルート取りは自分たちだけの山行では決して近寄らないところだった。45度を超えるような斜度はとても正面を向いて滑ることはできず、ずっと横滑りの連続でずれ落ちていくしかなかった。これまで様々な斜面を滑ってきたつもりだが思わず「まじかよ〜」とつぶやいていた。滑り降りるとガイドが親指を上げて「Good!」。振り返ると後続たちが苦戦しながら恐る恐る降りているのが見える。全員が降りると「Good Team!」といって称えてくれた。オートルートでは通常、高度順応も兼ねてガイドがメンバーの力量を判断するためにスキー場のゲレンデで足慣らしをする。今回はその時間がなかったため実地の中で見ていたものと思われる。これから連続するきわどい斜面を滑り降りて来られるか判断するため、故意にこの崖のような地形を滑らせたのだろう。なぜなら我々が降りてきたルートの少し先には快適そうな斜面がいくつもあったからだ。
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この絶壁を横滑りで・・・怖ッ!
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ガイドが「Good!」
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後続の図
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滑りはお目に適ったようだが登りはそうもいかなかった。ここまでの登りでヨーロッパの人々にことごとく抜かされてきた。西洋人の登りはめちゃくちゃ早いとは聞いていたが、それを目の当たりにした。女性も含めてとにかく早いのだ。日本人の登りが遅いのはガイド界隈では周知のことだ。

アルジェンチェール氷河を横切りパッソンのコルを目指して登っていった。もう直ぐパッソンのコルというところでガイドが小さな点発生雪崩に遭う。あっという間に2mほど流された。「この先もっと大きな雪崩れがあるかもしれない。気をつけなければ」とガイド。この先が少し不安になった。
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アルジェンチェール氷河
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そうこうしているうちにパッソンのコルがその全容を現した。
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 パッソンのコル この鞍部を越えていく
 

コルの取り付きに続々と人々が集まってきた。ブーツアイゼンをつけスキーをザックに取り付けた。ピッケルはいらないとガイド。
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見上げるとそれは垂直の壁のようだった。一歩一歩アイゼンを噛ませながら登っていく。下を見ると取り付きが見えないぐらい急だった。必死だったのでどのくらい時間を要したかわからないがなんとかコルを登った。後ろからMさんがピッケルを使いながら登ってきた。ピッケルを使った方が楽だったという。不安な場合はピッケルを使った方がいいかもしれない。
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全員登り切った。思わずハイタッチ。ここで時刻はすでに15:00

ガイドから二つの選択肢が示された。ひとつはこのままトゥール氷河(Glacier du Tour)を下降してバルメスキー場に降りるか、ふたつ目はこの先2つのコルを越えてシャンペに抜けるか、登りは400mぐらいであと3時間ぐらいとのこと。時間も時間だったが、まだ気力は残っている。ガイドが選択肢として提示しているということならやはり行くしかない、ということでシャンペ行きを決意する。

ここから標高3000mを超えるトゥール氷河を延々と歩いた。高度順応できていない私とCさんがバテてきた。EさんMさんはヨーロッパで高度トレーニングを積んでいたので問題ない。軽い頭痛と吐き気が足取りを重くした。Cさんがかなり遅れている。見かねたEさんがかなり先を行くガイドまで駆け寄っていって何やら話している。Cさんが頭痛で辛そうなのでここからバルメに降るのはどうかと持ちかけたが、多少の頭痛は大丈夫、ゆっくり先へ進もう、といって提案は却下されたようだ。そしてガイドは、辛いのであればせめてザックを持ってあげよう、と言って引き返していったとのことだ。”急げ”ということではなく”できるようにしてあげる”という考え方に感心したとEさんが話していた。空身になったCさんはペースが上がりわれわれに付いてこられるようになった。私も快調とはいえないもののなんとか付いていった。
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パッソンのコルからトゥール氷河へ
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標高3000mを超える氷河を行く
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 ガイドにザックを持ってもらう
 

トゥール氷河を横断する緩やかだが長い登りが続いた。氷河の中は風もなく結構暑い。それがじわじわ体力を消耗していった。そしてきょう2つ目のコル、トゥールのコル(Col du Tour)に着いた。この尾根がフランスとスイスの国境だ。トゥールのコルには雪がなく登攀できない。その500mほど右側の雪がついているコルを越えるという。コルの先の斜面の状況を見てくるのでここで待機してくれといってガイドが空身で急斜面を登っていった。コルの先に姿を消したガイドが再び現れてOKサインを出した。硬い急斜面のキックターンにてこずりながらもガイドのサポートを得ながら最後はスキーを脱いでツボでよじ登った。全員無事コルに到着。
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トゥールのコルが見えてきた
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コルには雪がついてない
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コルの先の雪の状況を見に行くガイド
 

最後にガイドが斜面をキョロキョロしながら登ってきた。どうやらスマホを落としたらしい。われわれも目を凝らして斜面を探したが見つからない。もう時間も押しているので先へ進もうとガイド。現在地の確認もそうだが、シャンペに迎えにくる事務所のご主人に下山時間の連絡ができないらしい。ここは早く降りて先の安全な場所でわれわれの携帯から連絡しようということになった。

コルの向こうはスイス。かなり急なすり鉢状の斜面になっていた。ここも30mほどを横滑りで真下に降りていった。その先左側の支尾根の岩の下に回り込むよう指示があった。先でドーっと表層雪崩が起きた。新雪は20〜30cmほどあったと思われる。雪崩の幅と長さは40〜50mはあった。先をいったCさんが雪崩の瞬間を見たそうだ。その雪崩れた斜面(表層新雪がなくなった箇所)をガイドが滑っていった。この間に起こった一連の現象も強烈だったが、のちにガイドの話を聞いて度肝を抜かれた。つまりはこうだ。コルを越えた斜面は完全に雪崩リスクがあったためその斜面を滑降することは避け、雪崩を最小限に回避するために一旦ゆっくりと横滑りで下って岩の下に入り込み、その先の斜面に衝撃を与えてわざと雪崩を起こし、新雪が雪崩れた後の斜面を滑り降りたということである。岩の下に入り込んだことについて、ガイドに確認したわけではないが、おそらく支尾根の岩の下に行けばその上は岩で雪がないため上部からの雪崩リスクは最小限に抑えられるということなのだろう。とにかくシャモニーのベテランガイドの凄さは想像をはるかに超えていた。
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カニ歩きで慎重に下りる
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岩綾の下へ回り込む
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故意に起こした雪崩
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表層を切り落とした斜面を滑る
 

斜面を下るとトリエン氷河(Glacier du Trient)だ。誰も歩いていない新雪の氷河を5人でトレースを刻んでいく。右の岩山にはトリエン小屋が見えている。小屋への顕著なトレースは見当たらず宿泊客はほとんどいなさそうだった。振り返れば落ちていく太陽がエギュイユ・デュ・トゥール(Aigulle du Tour:3540m)の長い影を氷河に延ばしていた。誰もいない氷河の雪原で絶景が繰り広げられていた。
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トリエン小屋
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トリエン氷河下流方面
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エギュイユ・デュ・トゥールに落ちる太陽
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エキャンディのコルを目指す
 

そこからエキャンディのコル(Col des Ecandies)までもパウダーだった。疲れも忘れて楽しく滑った。
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エキャンディのコルの取り付きに着いたときすでに18:30。サマータイムと日の長さが幸いしてあたりはまだ明るかった。ここで事務所のご主人に連絡を取りたいとのことだったが、われわれは電話番号を聞いていなかったため、Mさんが機転を効かせて事務所のHPから事務所に連絡しスタッフに現在地と下山予定時刻を伝えた。
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お迎えの主人に電話するガイド
 

エキャンディのコルはブーツアイゼン、シートラ、アンザイレンで登った。斜度はあるがパッソンのコルよりは短くロープも張ってあって比較的簡単に登れた。振り返ると夕陽がまさに山影に沈まんとしていた。
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落日 エキャンディのコルより
 

エキャンディのコルを越えればあとは下るだけだ。アルペッティの谷もパウダー天国だった。これ以上いらないというぐらいパウダーでお腹いっぱいになった。しばらく軽快にシュプールを刻みながら下っていった。
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ヨーロッパのパウダー天国!
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シャンペが近づくにつれて雪が固くなり林道はガリガリでプルークで降りていった。別荘が見えてくるとやがてゲレンデになりスキー場の駐車場に着いた。時刻は20:00。残り3時間のところ5時間かかったわけだ。辺りは薄暗くなっていた。グランモンテのゴンドラを降りてからここまで約22km、10時間30分の行程だった。ともあれ全員無事でよかった。

ガイドがスマホを無くし連絡が遅れたため、事務所から連絡が来る前にお迎えのご主人が心配してレスキューに連絡したそうだ。ご心配をおかけした。

この日はシャモニーの宿に戻った。

オートルート1日目はかなり長くハードなルートだった。本来なら2〜3日かけて歩くルートだが、これを1日でクリアしたことで諦めかけていたオートルート踏破の可能性が十分に見えてきた。

 

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【2日目】

By , 2024年5月9日 10:11 AM

オートルート 2日目(4/3)ヴェルビエ〜ショーのコル〜モミンのコル〜プラフルーリ小屋

山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】                     
【1日目】2024年4月2日 グランモンテ〜シャンペ 
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
 
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Haute_route All
 
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昨日の疲労が抜けないまま2日目を迎えた。昨夜寝たのは0:00近かったと思う。今日からいよいよ小屋泊まりのルートに入る。眠い目をこすりながら荷物をまとめた。行動用の荷物以外はゴールのツェルマットまで回送してくれる。7:30にガイドが来た。送迎用の車に乗り込む。ご主人がヴェルビエまで送ってくれた。

ヴェルビエには9:00に着いた。「お気をつけて。ツェルマットでお会いしましょう」ここでご主人とはお別れだ。ゴンドラに乗ると車窓から雰囲気のあるリゾート宿泊施設が軒を並べているのが見えた。ゴンドラを降りるとスキー場を滑ってもう一つ奥のゴンドラに乗った。
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ゲレンデのトップからは少し滑り左に大きくトラバースして一気にショーのコル(Col de la Chaux)の下に出た。「このショートカットはいい。モンフォー小屋からここまで1時間半はかかる」とEさんが言っていた。

シールをつけてショーのコルを目指した。何組かのパーティが登って行く。この日は天候が悪く山はガスの中だった。雪も降っていてゴーグルを装着した。ジグザグを刻みながらショーのコルを登った。スマホをなくしたガイドは25000分の1の地図とコンパスでルートを確認している。この先もツェルマットまでそうするそうだ。地図には手書きでさまざまな情報が書き込まれていた。これまでの経験がギッシリ詰まった貴重な地図にちがいない。
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ショーのコルを登る
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ショーのコル
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バルセロナの2人
 

コルの先の斜面を滑る。途中新雪斜面をトラバース中に一瞬斜面がズレたと思ったら自分を囲んだ斜面一帯が動きだした。「やばーーーー」と思って外へ脱出しようとしても制御が効かず転倒。斜面はそのまま流れて行く。その後数メートルほど動いて止まりことなきを得たが、これにはさすがにゾッとした。通りかかったバルセロナから来た二人が思わず「大丈夫か?」と声をかけてきた。
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恐怖体験も束の間、先を目指した。相変わらずのガスで視界がない。ガイドのトレースを忠実に辿るしかなかった。ガスが濃くなるとガイドは「晴れるまで待とう」と言って幾度となく待機を命じた。強風のなかで止まっているのも寒かったが、待っている間にガスは必ずといっていいほど晴れてくる。待つという選択はガイドならではだと思った。
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このころから風雪も強くなった。視界不良で行動に難儀しているスイスの年配のご夫婦に出会う。ガイドが声をかけるとこのルートは初めてとのこと。ならば小屋まで一緒にいこうということに。先頭はガイド、2番手がご主人、あいだに我々4人、ラストが奥様という布陣を組んだ。これもガイドの判断で、道迷いのリスクを減らすためガイドの経験とご主人のGPSを最大限に活用しながら進む方法をとったとのことだった。奥様をラストにしたのはチームの列を乱れさせないため。
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 スイスの奥様は素手だった
 

しばらく進むとモミンのコル(Col de Momin)だ。
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モミンのコルを目指す
 

一気に登って滑走モードに切り替えた。ローザブランシュ(Rosablanche)が右手に見えるあたりからプラフルーリ氷河(Glacier de Prafleuri)になるはずだがガスでまったく見えなかった。視界がない中、新雪に覆われた氷河をしばらくガイドのトレースを追っていった。どれぐらい進んだだろうか、かなりの時間が経過した。すると少しガスが晴れたその先に今夜お世話になるプラフルーリ小屋が見えてきた。ほっとした瞬間だった。あとで聞いた話だが、Eさんはこの瞬間が今回の山行でもっとも印象に残ったという。この日は以前から悪天候が予想されていて山行は無理だと考えていたが、間隙を縫うようなガイドの老獪な行動判断によってプラフルーリ小屋までたどり着けた。ここまで来れれば予定コースの完踏も夢ではないと・・・。
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プラフルーリ小屋が見えた
 

プラフルーリ小屋への最後の滑り込みは通常急なオープンバーンの真ん中をトラバースして大きく巻いていくが、この日は雪崩リスクが高いためオープンバーン手前の岩が露出したリッジ状の谷筋を木の葉落としで降りていった。この時も岩の下へ下へ入り込むようにコース取りしていた。あとで小屋から斜面を俯瞰したらなるほどとうなずけた。正面の大斜面のど真ん中をトラバースする通常ルートだと、トラバースした上部の新雪が雪崩れたらアウトというのがよくわかる。今回降りてきたコースは細い急峻な谷筋地形だが、上部に雪がついていない岩綾の下へ下へ退避できる唯一のコースだった。ガイドは20年前、この斜面をトラバース中に雪崩に巻き込まれ同行のクライアントに掘り出された経験があるそうだ。これも長いガイド経験がなせる判断である。
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この先は雪崩リスクが高い
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岩綾帯を縫うように下る
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 プラフルーリ小屋に着いた
 
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翌朝小屋から撮った写真
写真中央から左へのトラバースが通常ルートだが上部から雪崩たらアウト。
右寄りのルンゼ状の斜面を岩の下へ下へ回り込むように降りた。
 

この最後の箇所だけでなく、この日ガイドがとった後半のほとんどのルートが、12年前にたどった軌跡からはかなり左にずれていて、本当にこれで合っているのかとEさんが道中かなり心配していたとのこと。後でわかったのは、ガイドは地形を熟知していて雪崩リスクに鑑み全く別のルートを取ったとのことだった。「ルートとは人のGPSをたどるのではなく地形を見ること」という基本の大切さを痛感させられた。

悪天候で風雪もあり視界がない中だったが、ガイドの適切なルートファインディングで、この日は約9.2kmの行程を約6時間で小屋に到着した。

プラフルーリ小屋は快適だった。オートルート最初の山小屋だった私にとってすべてが新鮮。外装はおしゃれだし、悪天候で使えなかったが外には椅子とテーブルが並んでいた。中も十分綺麗だし、テーブルにはセンスのいい野花が飾られている。とにかくすべてが洒落ているのだ。
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ヨーロッパの山小屋は山岳会が所有・運営していて、広く集められた会費から運営費用が当てられているそうだ。物資はヘリ輸送だがその費用ももちろんそこから出されている。ヨーロッパアルプスと比較するのは適当でないかもしれないが、日本の山岳会や山小屋もあり方を根本的に見直すべきではないだろうか。

食事もおいしかった。スープにはじまり、ビーツのサラダ、マッシュポテト、メインの肉料理、デザートに至るまですべてが手作りと思われ、これには思わず舌鼓を打った。
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行動用の水分補給について、就寝前に備え付けのワゴンにペットボトルやテルモスをおいておけば無料でお茶(紅茶)を入れておいてくれる。このシステムは各小屋だいたい共通である。一部大きなサーバーから各自給湯する小屋もあった。ペットボトルの水は買うことができるが500ml8スイスフラン(約1300円←現在超円安だが)。ちょっと躊躇してしまう値段だ。

今時はスマホやカメラ等のバッテリー問題が付きまとうが、今回宿泊した山小屋(プラフルーリ、ディス、ヴビニエット)は充電が可能だった。ベルトール小屋は充電設備はなかった。いずれもCタイプのコンセントかUSB-Aが差し込めるタップが設置されていた。ただし早い者勝ち。ちなみにヴィニエット小屋は18:00以降は利用できないので注意が必要だ。
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こうして2日目の夜、初めてのヨーロッパの小屋で眠りについた。

 

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【3日目】

By , 2024年5月9日 10:11 AM

オートルート 3日目(4/4)プラフルーリ小屋〜ルーのコル〜ディス湖〜ディス小屋

山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】                     
【1日目】2024年4月2日 グランモンテ〜シャンペ 
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
 
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これまでの2日間で、ルートや山小屋についてずいぶん様子がわかってきた。高度にもなれてきた。

今日はディス湖の長いトラバースを経てディス小屋へ向かう。先達の記録によるとこのトラバースが長くきついと書かれていたので緊張感を持って臨んだ。
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プラフルーリ小屋の朝食
 

7:30、小屋を出発すると間もなくルーのコル(Col des Roux)を登る。高低差は150mほどだ。天気は上々。朝の澄んだ空気のおかげでコルからは前後の山々がくっきりと見えた。朝日がわれわれを迎えてくれた。快適な一日になりそうだ。
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ルーのコルへ
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トラバースが始まった。斜面には新しい雪がつきエッジが噛んで滑りやすい。硬い斜面もほとんどなく快調に進めた。Eさん曰く、前回は斜面がカリカリでかなり緊張しながら通過したらしいが、今回は「EasyEasy」と言って滑っていた。ディス湖はダム湖でコンクリートの直線的な堤体が見えた。ディス湖のトラバースは1箇所落ちたらやばそうなところがあったが、それ以外問題なかった。今回は楽に通過させていただいた。
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ダムの堤体が見える
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ディス湖のバックウォーターからは急坂の登りだ。シールとクトーをつけて登った。ガイドがブクタン(Bouquetin)がいると指差している。その方向に視線を凝らすと雪山の急斜面を小さな黒い物体がゆっくりとトラバースしていた。アイベックスとも呼ばれる野生の山羊で、3000mを超える高地でたくましく生きていた。400mほど登ってトラバースするとシュイロン氷河に出た。
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ディス湖のバックウォーター
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Bouquetin
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後続を待つあいだガイドと私はザックを枕に寝転んだ。標高2700m付近だが暖かくて気持ちがいい。左に見える稜線のコルはパ・ド・シェーヴル(Pas de Chevres)と呼ばれるハシゴがかかる峠でアローラに続いている。何組かのパーティが峠を越えたり、こちらに降りてきたりしていた。
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パ・ド・シェーヴル
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 快適な休憩
 

再び歩きはじめ右に回り込むと氷河を抱いたモン・ブラン・ド・シュイロン(Mont Blanc de Cheilon3870m)が全容を現した。目指すディス小屋はこの山と対峙するように丘の上に建っているはずだ。
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モン・ブラン・ド・シュイロンが全容を現した
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右の斜面を登るとディス小屋だ
 

最後の斜面をぐるりとキックターンすると視線の先にディス小屋(CABANE DES DIX;2928m)が現れた。石造りの立派な小屋だ。
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ディス小屋
 

ディス小屋はさすが要衝の小屋だけあって多くの人で賑わっていた。アローラからであれば先ほど見えたパ・ド・シェーヴル経由ですぐだ。
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天気がいいので小屋の周りはスキー板やシール、そして人間も天日干しの露店状態だ。ブーツもここかしこに並べられていた。オートルートに来ているスキーヤーに共通しているのはスキー板は細くて短いこと。ビンディングも可能な限り軽いものが付いていた。とにかく軽いギアでサクサク移動するのがヨーロッパ流なのだ。板の太さで圧倒的に多かったのはセンター85mm幅でガイドもそうだった。ヨーロッパアルプスでは登りや歩き、トラバースや硬い斜面の滑降が主体となるため太板は合理的でない。日本の感覚で太板を持ち込むと重いだけで苦労することになる。今回私とCさんは78mm幅の板を使ったがトータルで見たらベストな選択だったと痛感した。また、われわれ以外ほぼすべてといっていいぐらいビンディングのブレーキとリーシュをつけていなかった。流れたら単純に回収すればいいという考え方なのだろうか。ちなみに板はMOVEMENT、ビンディングはATK、シールはPOMOCA、ブーツはSCARPAが幅を利かせていた。この組み合わせはガイドもしかりだった。
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 シールの天日干し
 

Eさんはディス小屋に入る前にもう少し滑りたいらしく、小屋正面の斜面を登り始めた。すると「Wait!2、3分待ってくれ」「一人より二人の方が安心だ」と別のガイドから声がかかった。若いグループの一人も行きたがっているようで急いで支度をしていた。その彼はフランス人で股の位置がわれわれの肩ぐらいまである長身の青年だ。そして半袖のTシャツ・・・標高は3000m・・・。Eさんとその彼は向こうのコルを目指して歩いていった。
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向こうの尾根へ向かうEさん
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半袖のフレンチ青年
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もう直ぐピーク Eさん撮影
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 ショートターンを刻むEさん ディス小屋から撮影
 

その間われわれは外のテラスでランチタイム。ヨーロッパの山小屋の名物といえばロスティだ。空腹も手伝って抜群にうまい料理だった。モン・ブラン・ド・シュイロンのダイナミックな姿を眺めながらのランチは格別だ。いまでこそ氷河はこの山の上部にしか残っていないが、20年前は山のほぼ全体が氷河に覆われていたとガイドが話していた。
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ロスティ
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ディス小屋からの眺め
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氷河を抱くモン・ブラン・ド・シュイロン
 

我々のテーブルに2匹の犬が現れた。山小屋で飼われている犬だろうか。放し飼いで人懐っこい。どうやらわれわれの食べこぼしを狙っているらしい。
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しばらくしてEさんとフランスの青年が滑り降りてきた。天気も最高で大いに満足した様子だった。このフランスの若者グループは前日のプラフルーリ小屋で隣のテーブルだった。Eさんがその青年から聞いた話によると、このグループもガイド山行で、4/1にアルジェンチェール小屋に入ったが、翌4/2の朝は天候が悪くガイドの判断で山行を諦めてグランモンテスキー場に降りてゲレンデで遊んてからモンフォー小屋に入り、翌4/3にプラフルーリ小屋に来たという。つまりオートルートの一つのハイライトであるコル越えをスキップした形になってしまったようだ。4/2は確かに朝は天候が悪かったが次第に好転した。現にわれわれは4/2に1日でグランモンテから難所のコル3箇所を越えてシャンペに抜けている。こうしてみると4/2の天候判断が鬼門だったようで、われわれのガイドの判断がいかに的確だったかを思い知ることになった。本当に素晴らしいガイドに巡り会えたものである。

18:30、お楽しみの夕食。こちらの料理も御多分に洩れずおいしかった。食前には地元の白ワインが振る舞われ、オニオンスープにマッシュポテト、厚切りハムと続く。最後にチョコレートケーキ。同じテーブルになった、昨日行動をご一緒したスイスのご夫婦と一緒に楽しいひとときを過ごした。山行中に奥様が転倒して肩を痛めたらしくツェルマット行きは諦め、あすアローラに下りるとのこと。残念。
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ベジタリアンメニュー
 

ディス小屋の食堂にライチョウの写真が飾ってあった。ディス小屋よりも標高の高いところに生息していて、日本と違いめったに人前に姿を現さないらしい。
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小屋の様子
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ポケモン?
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夕食が済んだころ外はまだ明るかった。ちょうどモン・ブラン・ド・シュイロンの残照が終わりかけていた。明日登る氷河の斜面にはたくさんのトレースが見えた。
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残照のモン・ブラン・ド・シュイロン
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明日登る氷河
 

明日のルートについてガイドから地図を見ながら説明があった。明日は今回のルートで最高地点まで上がる。
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5:00に朝食、6:00に出発するとガイドから告げられた。暑くなるので早め早めの行動をとりたいようだ。

 

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【4日目】

By , 2024年5月9日 10:10 AM

オートルート 4日目(4/5)ディス小屋〜ピンダローラ〜ヴィニエット小屋

山行記録は7回シリーズです。
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今日はいよいよ行程中最高峰のピンダローラ(Pigne d’Arolla:3797m)を経由してヴィニエット小屋(Cabane des Vignettes CAS)へ行く。日本の富士山より高いところを通ることになる。

 
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ディス小屋の朝食
 

6:00はまだ暗くヘッドランプで出発。モン・ブラン・ド・シュイロンを横に見ながら硬い斜面をキックターンで登っていった。
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次第に明るくなってきた。朝日が射すモン・ブラン・ド・シュイロンをバックに登る姿がじつに絵になる。いたるところに氷河が顔を出していた。
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急な斜面を登り切ると平原になり休憩。視線を送ると手前の山のあいだからマッターホルン(Matterhorn:4478m)がのぞいていた。薄い雲でにじんだ朝の太陽がマッターホルンを真上から照らしている。マッターホルンの右にある秀麗な山はダン・デラン(Dent d’Herens:4173m)だ。マッターホルンとダン・デランはこれ以上ない構図と光の中でその勇姿を見せてくれた。夢中でシャッターを切った。
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アルプスの急峻な山をバックにたくさんのスキーヤーが登ってきた。しばらく進むと青い岩のようなものが転がっていた。氷河の破片だ。破片といっても人の背丈よりずっと大きい。落石ならぬ落氷である。それに寄りかかって休んでいる人もいた。
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そこを過ぎると氷河の上に回り込む。カリカリの氷河のトラバースはクトーも噛まず緊張した。Mさんは全行程中でここが一番緊張したとのこと。ガイドが一番際どいところで待っていて足の置き場を細かく指示してもらい最後は引っ張り上げてくれて助かったと話していた。登ってきたバルセロナの青年とも思わず「Good job!」タッチ。
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氷を渡る少しの距離だがいやらしかった。
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緊張のトラバース終了
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ここまでくればピンダローラはすぐそこだ。そのまろやかな山頂には多くの人の姿が見えた。ゆっくり山頂を目指した。
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ピン・ダローラ山頂が見えてきた。
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バルセロナの2人が下りてきた
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ピンダローラ山頂。行程の最高峰にして富士山より高いところにいる。つまり人生でもっとも高いところに立っている、と思うと感慨もひとしおだった。視界もよく風も強くない。山頂からは360度絶景が拝めた。正面にはマッターホルン、振り返るとヨーロッパ最高峰のモンブラン(Mont Blanc:4807m)がどっしり威厳のある姿で鎮座していた。しばらくアルプスの大眺望を堪能させてもらった。
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マッターホルン
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モンブラン
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みんな記念撮影
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ここからヴィニエット小屋まで一気に滑り降りる。山頂直下を軽快にターンしながら滑る。途中から新雪が腐って曲がらない苦痛の斜面になった。シュテムターンでこなしながらゆっくり降りていった。
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ピン・ダローラから滑降
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マッターホルンに向かって大滑降
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雪、腐ってます。
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 STOP! この先は氷河。
 

しばらく滑るとガイドがHutだと下の方を指差した。その先にヴィニエット小屋が見えた。崖の上に建っているその様子はまるで映画でも見ているようだった。よくこんなところに小屋を建てたものである。雪崩を避けるための絶妙な場所なのだろう。そこから長いトラバースで回り込みながら下り、最後は細い尾根筋を滑落しないように滑っていった。
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ヴィニエット小屋が見えた。
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ヴィニエット小屋もオートルートの要衝、多くの人でごった返していた。スキーやシールの置き場所を探すのも苦労する。
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チェックインしたら定番のランチだ。もちろん注文したのはロスティ。例によっておいしい。5人であっという間にたいらげた。
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夕食までたっぷり時間がある。昼寝したり写真を撮ったりと贅沢な時間を過ごした。食堂の奥にちょっとしたテラスがあって、そこからはモン・コロン(Mont Collon)の岩綾がすぐそこに見えた。
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ヴィニエット小屋より
 

小生、日本の山小屋でグッズを買ったことがないが、さすがにヨーロッパアルプスの山小屋となると衝動が抑えられず、ヴィニエット小屋のキャップを40フランで購入した。ちなみにこの小屋ではユーロ、フランどちらでも同レートだった。

夕食はスープと肉のパスタ添え。とてもおいしかった。そしてガイドと山の話で盛り上がったあと、明日の行動について確認し就寝となった。
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明日も5:00朝食、6:00出発だ。

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【5日目】

By , 2024年5月9日 10:10 AM

オートルート 5日目(4/6)ヴィニエット小屋〜レベックのコル〜アローラ氷河〜ベルトール小屋

山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】                     
【1日目】2024年4月2日 グランモンテ〜シャンペ 
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
 
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ヴィニエット小屋の朝食
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今日も6:00出発。ヘッドランプを頼りに小屋の前の細尾根を慎重に滑り降りる。そこからトラバースして平原に立ったところでシールをつけた。
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 ヴィニエット小屋方面を振り返って
 

昨夜ビニエット小屋に泊まっていたわれわれ以外のほぼ全てのパーティはレベックのコル(Col de l’Eveque)を越えたらその日中にツェルマットへ下りるとガイドが話していた。ベルトール小屋(Bertol Hut:3311m)を経由するのはノーマルルートではないらしく、これは誰のアイデアかと聞いてきたらしい。Eさんのアイデアだが、その理由は行ってみてよくわかった。詳細は後述する。

 
レベックのコルへ
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 レベックのコル
 

レベックのコルを越えると一瞬イタリアに入りツェルマットへのルートと分ける。われわれは大きく左に旋回し再びスイスに入った。このルートを取るのはやはりわれわれだけのようでトレースはひとつもない。右岸の支尾根には避難小屋(Refuge des Bouquetins CAS)が見えた。やがてアローラ氷河の広く大きな谷に入っていった。鳥海の千蛇谷を数倍大きくしたような広大な谷だった。
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この辺はイタリアかな?
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避難小屋
 

いくつかのパーティが登ってくる。ガイドがルートの状況をヒアリングしていた。続くパーティの一人が「日本人ですか?」と聞いてきた。そうだと答えると「わたしはドイツからきました」と流暢な日本語で喋っている。
「日本語上手ですね」
「にほんにすんでいたことがあります」
「日本のどこですか?」
「さいたまのところざわです」
あまりのローカルさに思わず吹き出してしまった。これから上まで登って日帰りでアローラに戻るとのことだ。
「お気をつけて」
「ありがとうございます。たのしんでください」
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日本語が上手なドイツ人
 

広いアローラ氷河の左岸をしばらくトラバース。あまりの広大さに夢の中を滑っているような感覚だった。
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アローラ氷河を振り返って
 

やがて複数のトレースが交わる地点に着いた。アローラからたくさんの人々が登ってくる。上からも滑り降りてくる。ガイドが呼び止め斜面の状況を聞いていた。この先斜面が硬いのでクトーを着けろとのこと。
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この先の下流がアローラ
ヴィニエット小屋は正面の山の中にある。
あの崖を滑り下りれれば10分ぐらいでここまで来られる、とは言っていたが・・・。
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 斜面の状況を聞くガイド
 

いよいよ今回最後の山小屋ベルトールへの登り、標高差は600m。ベルトール小屋の標高は3311mで、今回の行程中もっとも高い場所にある小屋だ。徐々に斜度がきつくなってきた。200mほど登ったところから急斜面を巻いていくが、ここがいやらしかった。斜面はカリカリでクトーを効かせるのもひと苦労。おまけに上からスキーヤーが次々に滑り降りてくる。そのうちの一人が私が難儀しているちょうど上でバランスを崩して倒れ込んだ。もし彼がそこで滑落していたら私は巻き添いを喰らって谷の底だったかもしれない。今考えてもゾッとする。少し先でわれわれをフォローしていたガイドが私の後ろの方を見ながら「おーーーー」と叫んでいた。私は後ろを振り向く余裕もなくひたすらエッジを噛ませて踏ん張っていた時だ。あとで聞いたがそのスキーヤーはこの先で暴走しバランスを崩して滑落したそうだ。かなり下った先だったので雪が付いているところで止まって大事には至らなかったようだが。ちなみにこのあたり、ツェルマットからヴェルビエに抜ける山岳レースPDGPatrouille des Glaciers)のコースになっている。支柱が立てられていたがレース本番ではここに滑落防止の網が張られるらしい。それほど滑落の危険がある場所ということだ。このレースのトレーニングで多くの山岳スキーヤーが訪れていたのかもしれない。余談だがこのPDG、第二次世界大戦真っ只中の1943年に始まったスイス軍の兵士能力テストが起源の山岳スキーレースである。隔年開催で今年は開催年だ。日程は2024年4月17日〜21日。この原稿を書いている今、まさにアルプスの山中で熱戦が繰り広げられていることになる。(後日知ったが、今大会はアルプス全体が悪天候で4本中3本のレースが中止になったそうだ)
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難所を過ぎると後はひたすら登るだけだ。軽装の男女がものすごいスピードで駆け上がっていった。やがて斜面の上の方にベルトール小屋が小さく見えてきた。あと標高差300mぐらいだ。振り向くときのう登ったピンダローラが真っ白でまろやかな姿を見せていた。
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ピン・ダローラをバックに
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一歩一歩小屋が近づいてきた。ヴィニエット小屋同様、これまたすごいところに建てたものだと感心する。最後の急坂を登ってようやく小屋に着いた。小屋の周りに平な落ち着けるところはなくわずかなスペースに腰を下ろして後続を待った。
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右上にベルトール小屋が見える
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小屋の周りに落ち着けるところはない
 

全員が到着した。スキーは小屋へは持ち込めないためデポするが、明日の滑走に備えて尾根の反対側にデポした。小屋へはハシゴで登っていく。ハシゴで登るとは聞いていたが正直ここまで長いハシゴだとは思っていなかった。スキーブーツでの登りは滑りそうで怖い。セルフビレイしながら一段一段登っていった。ハシゴを登り切ると階段になるがこれも足場用の階段で心許ない。ようやく玄関まで来たが、足場は鉄の網で足下には谷底が丸見え。震えながら小屋に飛び込んだ。岩綾の上にはみ出すように建てられた小屋はまるで肝試しでもしているかのよう。まんまとドッキリ企画にはめられたような心境だった。
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「Bienvenue」 フランス語でWelcome
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ハシゴ上部より リッジの上に小屋が建っている
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ベルトール小屋は名物小屋。たしかにこんな小屋にはめったにお目にかかれないだろう。なるほどEさんがベルトール小屋にこだわった理由がわかった。オートルートに来るならやはりベルトール小屋は外せないと予約してくれたのだ。そしてこの小屋、予約は電話のみ、かつ、すぐに埋まってしまうらしい。今回の計画はベルトール小屋の予約日を軸に組んでいったともいえる。ありがとうEさんMさん
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トイレは外
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融水を引水
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まずはお決まりのロスティをと思ったがメニューになく、 Crouteという料理で空腹を満たした。隣のテーブルではカードゲームに興じていた。ヨーロッパではトランプが盛んのようだ。宿帳が回ってきて記名した。ページをめくる限りここ数年は日本人の名前は見当たらなかった。
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小屋は円形になっていて食堂からの眺めも抜群。マッターホルンが穂先を少しだけ覗かせていた。明日通るルートにはいくつかのトレースがついていた。
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マッターホルンが覗く
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仲間が昼寝をしている間、私は撮影にいそしんだ。太陽がいい感じに傾き一帯が琥珀色に染まってきた。外の階段を陣取りピンダローラ方面にレンズを向けた。刻々と変化する光と影をカメラに収め続けた。実にいい時間だった。
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ベルトール小屋からピン・ダローラ
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反対側にはマッターホルン
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穂先を覗かせるマッターホルン
 

夕食。まずスープ、そしてメインはライスの上に肉がのせられたもの。このライスが思いっきりアルデンテで、私はこんなものかと美味しく食べていたが、ガイドが「これはMistakeだ」といって顔をしかめていた。厨房がかなり混乱していたのでご飯がうまく炊けなかったのかもしれない。明日の朝食のオーダーを書きながらデザートを食べた。
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小屋の主人から明日の天気について説明があったが言葉が分からずさっぱりだった。どうやらあまりいい条件ではなさそう。「大丈夫そうですか?」と聞くと「彼はペシミスト。大丈夫だ」とガイド。

部屋の窓からは残照のピンダローラが名残を惜しんでいた。
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夜はなかなか寝付けなかった。高度のせいかもしれない。何度も目を覚まし何回かトイレに行った。トイレは外にあって、つまり下がスケルトンの鉄の網の上を通らなければならない。真っ暗で何も見えないことが幸いして怖くなかったが。夜中外に出たときかなり強い風が吹いていた。明日予定通りに行けるか不安になる。

 

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2024年4月 オートルート シャモニー〜ツェルマット【6日目】

By , 2024年5月9日 10:10 AM

オートルート 6日目(4/7)ベルトール小屋〜テーテ・ブランシュ〜ツェルマット

山行記録は7回シリーズです。
【プロローグ編】                     
【1日目】2024年4月2日 グランモンテ〜シャンペ 
【2日目】4月3日 ヴェルビエ〜プラフルーリ小屋
【3日目】4月4日 プラフルーリ小屋〜ディス小屋
【4日目】4月5日 ディス小屋〜ヴィニエット小屋
【5日目】4月6日 ヴィニエット小屋〜ベルトール小屋 
【6日目】4月7日 ベルトール小屋〜ツェルマット
 
 今回の全行程 >>> クリックで拡大
Haute_route All
 
 6日目のルート >>> クリックで拡大
Haute_route Day 6 (2024_4_7)
 

いよいよ最終日。今日も6:00出発だ。われわれの歩きが遅いこともあり、暑くなる前に行動するためなるべく早く出発したかったとのことだった。

ガイドはわれわれに、全行程を通じて一度も「遅い」とか「もっと早く歩け」などと言わなかった(結構な割合でこのようなことを言うガイドがいるらしい)。自分のやり方を客に強いるのではなく「この客がどうやったらオートルートを完踏できるか」を常に考えながらさりげなく提案してくれる、そういう稀なガイドだったと思う。あらためてこのガイドに巡り会えたことに感謝したい。

風もなく穏やかで予定通りツェルマットに降りることになった。これで計画していた全行程を辿ることができる。嬉しさがこみあげる中、ヘッドランプをつけて名物小屋・ベルトール小屋を後にした。

まずはハシゴを降りなければならない。2枚のカラビナをつけたスリングで確実にセルフビレイをとりながら慎重に降りていった。リッジ状の尾根の反対側に出て昨日デポしておいたスキーをはいた。ここから大きくトラバースする。
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ベールトール小屋を振り返って
 

氷河の向こうの朝焼けが美しい。これから今日の最高地点テーテ・ブランシュ(Tete Blanche)に登っていく。このあたりからPDGPatrouille des Glaciers)用に立てられたポールが出てきた。傾いたポールをガイドが直しながら登っていった。先行のパーティはアンザイレンで登っていた。
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周囲の山々には氷河の塊が隆起し蒼い溶岩のように露出していた。人と比較すると改めてその巨大さがわかる。
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最後の斜面を登っていくとマッターホルンが姿を見せはじめた。テーテ・ブランシュの肩に到着すると正面にドーンとマッターホルンが姿を現した。4000mを超える名峰と遜色のない高さから眺める姿は平地からのそれとは一線を画していた。サハラの砂で空気が霞んでいたが淡いトーンのマッターホルンもなかなかいい。真上の太陽がマッターホルンを神秘的に照らしていた。マッターホルンの麓にはこれから滑っていくツェルマットまで延々と続く谷が一望できた。テーテ・ブランシュに登る人たち、アンザイレンで滑る人たちが目の前を過ぎていった。
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テーテ・ブランシュの肩。PDG関連の荷だろうか?
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光降るマッターホルン
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Eさんはテーテ・ブランシュまで行ってくるといって登っていった。Eさんが帰るまでこの大展望を堪能した。

Eさんが合流してマッターホルンをバックに全員で記念撮影。フィナーレにふさわしい一枚になった。

さあ、あとはツェルマットまで長い滑りだ。ザラメ状になった雪にいい感じでターンが刻めた。PDG用のポールを頼りに下っていった。次第に斜面が固くなっていく。ときおりセラックが顔を出した。雪が茶色い部分はサハラ砂漠の砂だ。ここからはとにかくマッターホルンを真正面に滑り降りて行った。
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マッターホルンに向かって滑降
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セラックとサハラの砂とマッターホルン
 

岩綾の中腹まで氷河がせりだしているところに来た。氷河が溶けて流れ出した部分が滝状に凍っているのが見える。PDGコースの中でも危険箇所といわれるところだ。雪崩の跡がはっきり見える谷を通過しなければならない。50m間隔で一人ずつ滑った。固まったデブリを通過するが、これがとてもターンなどできないほど難儀した。終始プルークで慎重に通過。脚がガクガクになった。
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 デブリ通過
 

その先は氷河が侵食した広い谷をマッターホルンを真横に見ながら滑っていった。左岸のモレーンの上に小屋(Schönbielhütte SAC)が見える。ツェルマットから登ってくる人もいた。モレーンに囲まれてくると斜度もなくなり平坦になっていった。木々も出てきた。いよいよラストランだ。
 
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モレーンの谷
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雪が切れてスキーを担いで15分ほど歩くとスキー場に出た。あとはツェルマットまでゲレンデと林道を滑るだけだ。
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氷河が溶けたエメラルドグリーンの川を渡って長く楽しいオートルートは終了した。最後は全員でハイタッチ。
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夢にまで見たオートルート。この山スキーヤー垂涎の山旅はわれわれに期待以上の感動を与えてくれた。そしてこの旅は私の思い出にもっとも深く刻まれることだろう。

山行前にさまざまなトラブルがあったり、天候によって期間が短くなったりしたが、大きな問題もなく全員無事完踏できた。この山行はシャモニーのガイドそしてなんといってもEさんMさんなしでは実現しなかっただろう。3人にはあらためて感謝の意を伝えたい。Merciそしてありがとう。


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2023/3/9 乳頭山

By , 2023年4月5日 2:24 PM

・天候:曇りのち晴れ
・ルート:乳頭温泉〜孫六温泉〜田代平山荘〜乳頭山〜ピストン
・メンバー:CK、KK(撮影&記録)



秘湯の一軒宿が並ぶ乳頭温泉をベースに乳頭山へ。
一級品のブナの森を堪能しながらスキーでのんびりと山頂を目指しました。
乳頭山から望む秋田駒ケ岳の勇姿は一見の価値あり。

2023/3/8 秋田駒ケ岳

By , 2023年4月1日 5:25 AM

・天候:晴れ〜曇り
・ルート:アルパこまくさ〜アッスルスキー場跡〜八合目小屋〜男女岳(秋田駒ヶ岳)〜ピストン
・メンバー:CK、KK(撮影、記録)



早春の東北滑走。
今回は名峰・秋田駒ケ岳。

快晴の朝、ご来光とともに出発。
3月上旬で天候が落ち着いていたものの山頂付近は猛烈な風で立っているのもやっと。
山頂ではエビのシッポが見事な造形で迎えてくれ、360度の展望が疲れを癒してくれました。
山頂直下の大斜面を存分に楽しみながら、ひと足先に春スキーを楽しんできました。

2023/1/27 鍋倉山

By , 2023年2月8日 11:05 AM

・天候:曇り
・ルート:温井〜沢コース〜鍋倉山〜東尾根〜北東尾根〜温井
・メンバー:KKIさん(会員外)

今冬の北信州は雪が少なく、鍋倉山もなかなか藪が埋まりませんでした。

そんな中、1月後半にやってきた大寒波でようやくまとまった雪が降りました。
パウダー天国の鍋倉山もコンディションは万全。

美しいブナの森を堪能しながらのハイクアップとパウダーラン。
途中からI さんと合流し鍋倉山のパウダーを堪能しました。